この記事では、産前産後休暇・育児休業を利用して保育料を安くできる方法を説明します。すべての方が対象となるわけではありませんが、知っておいて絶対に損はしない内容ですのでぜひご一読を。
キーワードは「配偶者控除」です!
産前産後休暇・育児休業明けだと保育料はどうなるか
まずは「保育料を安くする!」という話の前に、そもそも産休・育休明けに認可保育所を利用すると保育料はどうなるの?という点を解説します。
保育料は1〜2年前の年収ベースで決まる
この点は、以下の記事で詳しく解説しています。保育料に関する基本的な内容が書かれていますので、読んでおくとこの先の内容も理解しやすくなると思います。
保育料は毎年9月に更新されるので、具体例を挙げると
のような感じになります。保育料は、最新の家計状況ではなく、一昔前の家計状況で計算されるのです。
勘違いが多いのは次のようなケースです。
母の平成27年の年収は400万でした。子供が生まれ、平成28年3月に育児休業を取得したため、平成28年の年収は激減しました。そして、平成29年4月から育児休業から復帰し、子供を保育所に預けることにしました。
この場合、平成29年4月〜8月の保育料は平成27年中の年収で計算されるので平成28年中の育児休業に伴う収入源は一切考慮されません。つまり、4月〜8月は収入がなかったにもかかわらず高い保育料を払う必要があります。逆に9月から翌年8月の間は、育休復帰して働いているにもかかわらず保育料は、育児休業で年収が減っていた頃の年収ベースで保育料が計算されます。
↑は、以下の記事から引用です。
なんだかわかりにくい話ですが、つまり「産休・育休を取得して収入が減ると、自動的に保育料も安くなるけど、安くなるには一年ほどのタイムラグがある!」ということです。
なので、産休・育休の取得で母の収入が減るだけでも保育料は安くなります。
この記事で紹介する保育料節約法は、これに+αをした方法になります。
これまでの話で押さえておきたいのは「産休・育休を取得すると収入が減る」という点です。当たり前の話だけど、以下の話では大事なキーワードになります。
収入が減ったら配偶者控除で税額を安くできないか検討すべし!
母の収入が減って一定の要件を満たせば、父は住民税の計算時に配偶者控除を受けれるようになります。つまり、父の住民税が安くなります。
保育料は住民税で計算されるので、父の住民税が安くなれば保育料も安くなる可能性があるわけです。
配偶者控除って何?
配偶者控除とは所得控除の一種です。いきなり所得控除とかいうわけのわからない用語が出てきました。
所得控除については、以下の記事で解説しています。住民税の基本が書いてあるので知らない方は、ご一読されることをお勧めします。
上の記事の中で書いてますが、住民税は
「住民税の額」={(「①年間収入」−「②所得控除」)×0.1(10%)}−「③税額控除」
という計算式により計算されます。配偶者控除は②所得控除に該当します。
配偶者控除は33万円です!
住民税の配偶者控除は33万円。(所得税の場合は38万円)
住民税の税率は10%なので、(「年間収入」ー「所得控除」)に0.1を掛けて税額を計算します。つまり、33万円の配偶者控除が受けられるということは33万円×0.1=3万3千円も税額を安くすることができるわけです。(厳密にはもう少し変動することがあります。)
市町村民税は1万9800円安くなる
計算された住民税は、その6割(6/10)が市町村民税、4割(4/10)が都道府県民税という内訳になっています。そして、保育料は市町村民税で計算されます。
配偶者控除を受けると、33万円×0.1=3万3千円のうち6割が市町村民税から減額されます。つまり、3万3千円×6/10=1万9800円だけ市町村民税が安くなることになります。(厳密にはもう少し変動することがあります。)
と、良い話ばかりしましたが、配偶者控除を受けるには一定の要件を満たさなければいけません。次はその点をお話しします。
配偶者控除を受けるには
配偶者がその年の12月31日の現況で、次の四つの要件の全てに当てはまると配偶者控除を受けることができます。
(1) 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません。)。
(2) 納税者と生計を一にしていること。
(3) 年間の合計所得金額が38万円以下であること。
(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
(4) 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。国税庁リンク
(1)と(2)は一般の家庭なら特に問題ありません。(4)は自営業の場合の話になるのでどこかの会社に雇用されている時は関係ありません。
特に大事なのは(3)です。以下で説明しましょう。世間一般で言われる「103万円の壁」の話になります。
「103万円の壁」
会社に雇われて(パートでも派遣でも構いません)働いた給与であれば、年間収入を103万円以下に抑えれば、配偶者控除を受けることができるようになります。
「パートで働くなら年収103万円以内に抑えた方がいいよ!」って話を聞いたことがあるかもしれませんが、103万が配偶者控除を受けられるかどうかのラインになっているんですね。
103万の次は「141万円の壁」配偶者特別控除
パート年収103万を超えてしまうと、配偶者控除は受けれませんが、配偶者特別控除という控除を受けることができます。配偶者特別控除は「急に配偶者控除がなくなると大変だから、103万を超えても配偶者特別控除という控除を用意してちょっとずつ控除額を減らしていきましょう」というものです。
配偶者特別控除の話は、以下の記事で。
産休・育休でも配偶者控除は受けられるよ!
配偶者控除の要件は、給与収入であれば103万円以内であることです。つまり、産休・育休によって年収が減った結果、103万円以内になった場合でももちろん該当になります。(103万円を超えていても141万円以内なら別に配偶者特別控除を受けることができます。)
「働いていたら配偶者控除なんて受けられないよ!」と思っている方が多いですが、それは正しくありません。産休・育休で臨時的に収入が減った場合には、要件さえ満たせば配偶者控除を受けることができます。
住民税の配偶者控除の申告方法
住民税の配偶者控除は、所得税の方でしっかりと配偶者控除の申告をしていれば、その内容が住民税にも引き継がれ、勝手に適用してくれます。
毎年12月になると、所得税の年末調整の申告用紙を渡されるかと思いますが、そこで配偶者控除の申告をしておけばOKです。(サラリーマンのみ。自営業の方は自分で確定申告することになります。)
配偶者控除が与える保育料への影響
まず、お住いの自治体の保育料表を見てください。市町村民税の額に応じて保育料設定がされていると思います。
先ほど、配偶者控除を適用すると市町村民税が1万9800円安くなると言いました。1万9800円税額が安くなると保育料階層がどれだけ変わるのかを確認してみましょう。保育料の階層を税額に応じて細かく設定している自治体だと、1万9800円も税額が減ると保育料階層も数段下がりやすくなるケースも多いです。